つづき。他に代用品がなかったり、その時々の人の好き嫌いによって性質を変化しないもの。蕎麦屋の出汁、伝統芸能の型、地震でつぶれた蔵に入っていた先祖伝来のお宝、会社、国、憲法、近所の野原に生えてたり飛んでいたりする絶滅危惧種。人間一人の一生よりも長く存在しつづけるものは大抵こうした性質を持っていて、その時々の人々の好みで性質を変化させたりしないし、そうすべきでない。宗教っぽくならないようにその理由を選べば、今自分達が嫌いだったり不用だと思っているものでも、今この世にいない自分達の子供がそう思うかは分からない、ということが挙げられるだろう。

善悪の基準もこうした性質のものの中に含まれるのではなかろうか。新しい仮想世界で善悪の基準を新たに作り上げようとするときに、「他人の嫌がることはやってはいけない」という教理を持ち出して、自分らの不快感に基づいて善悪の基準を作り上げていこうとする人達が現れるが、そうした行為はとても幼稚で危険なやりかただ。つづく。