デザインとしてのプレイヤー間の情報流通の制限

http://www.gamegirladvance.com/archives/2003/07/28/not_yet_you_fools.html

仮想世界は「仮想」なんだ。「仮想」だからこそ「現実」を離れることができる場所たりえる。現実の自分から離れたいからこそ、僕らは仮想世界で遊ぶ。仮想世界では人は別の自分になることができる。別の自分になることで現実の自分よりもより良い部分を持った人間になることができる。なんで人々はおんなじゲームを毎日毎日飽きもせずやり続けるんだ?それはそのゲームが好かれているからじゃない。皆ゲームの中でなれる違う自分が好きだからさ。

プレイヤー間を行き来できる情報の質や量を、例えばモンスターの強さのバランスを決めるのと同じようなデザインの見地から、制限を加えていくことが、MMORPGを単純作業とそこから得られる確実な見返りをみんなで仲良く楽しむサービスじゃなく、時空を超えた非日常的な社会と、そして人格をプレイヤーに形成させられるゲームとするためには、必要になってくるんじゃないか。

こんな考えを持った最も大きな理由は人狼BBSの存在にある。ここでは珍しく厳しいゲーム外への情報漏洩に関する制限があるにも関わらず、多くの人に理解され受け入れられ、ゲーム(というよりは社会)の質を高める方向にうまく機能している。

MUDDev-MLでもゲーム外でのコミュニケーションについて議論がおきている。

http://www.kanga.nu/archives/MUD-Dev-L/2004Q4/msg00056.php
http://www.kanga.nu/archives/MUD-Dev-L/2004Q4/msg00076.php

リアルタイムでの音声チャットに限定してはいるけれども、ゲーム外でのコミュニケーションへの批判(もちろん弁護もある)になっている。音声チャットを使える人と使えない人との間に生じるPvPにおける格差。異性、異種族のロールプレイが難しいこと。なによりリアルワールドが肉声を通してヴァーチャルワールド側へ浸透してきてしまうこと。

問題となっているのはゲーム世界で勝利するためや、プレイヤー自身にとって便利ならなんでもやる、という一部のプレイヤーの傾向にあり、人狼BBSにおいても現在進行形で問題をもたらしている。*1

知っていることがあればあるほど便利であるし、兵法にもあるとおり情報量の優越は勝利の鍵とされる。しかし全員が一つの世界を共有するMMORPGの社会で、個人が個人的な目的から他人と桁外れの情報量を持つことは、中世の時代、オカルトと疑心暗鬼に満ちた雰囲気を壊すし、もちろんゲームとしてのバランスを崩してしまう。

こうした傾向が多くの人々にあるのは仕方がないことだろう。ロールプレイなんて聞いたこともないなんて人が多いのは当然だ。今はMMOG自体やるのが初めてだという人だって多いだろう。それゆえ、現状ではなにも歯止めを設けなければ仮想世界はどんどん現実世界で仲良く多人数プレイのゲームをやっているような状態にみなされるようになってしまう。

ゆえに現実世界との境界をはっきり持ったフェアな仮想世界をデザインしたいなら、参加しているプレイヤーが持つ情報をどういった形に抑えるかといった計画が必要なのだと結論したい。こうした計画無しにに作られ、また管理されず、現実との境界があいまいでアンフェアな世界は周りを見回せばいくらでも例を見つけることができるだろう。

ちなみに情報流通の管理の必要性はRMTを始めとするゲームの外での経済活動を制限する際の根拠としても挙げることができるだろう。

*1:いろいろな手段を駆使して工夫してゲームを楽しむという態度は一人用のゲームでは問題がないだろう。僕もGTAはtrainerを使ってやりたい放題やって楽しんだ。